下見積とは?依頼への対応方法や参考見積りとの使い分けを解説

下見積とは?依頼への対応方法や参考見積りとの使い分けを解説

Point

  • 下見積は行政機関が予算編成や事業計画のために市場価格を把握する目的で依頼するもの
  • 発注前の情報収集であり、契約先の選定プロセスとは異なる
  • 下見積の依頼は、行政との関係構築のチャンスであり、提出することが望ましい

官公庁入札に関心を持つ方であれば、「下見積(したみつもり)」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。

行政機関や公共団体から突然見積依頼が届き、
「これって正式な発注なのだろうか?」
「応じるべきなのか?」
と戸惑った経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、行政が市場価格の調査を目的として事業者に提出を依頼する見積書、すなわち「下見積」について詳しく解説します。

下見積の依頼を受けた場合にどのように対応すればよいのか、応じることでどのようなメリットがあるのかを、実務上の対応ポイントや行政側の狙いや背景を踏まえて分かりやすく整理しています。

なお、「下見積」と「参考見積」の定義については様々な見解がありますが、本記事の下見積は「参考見積と同義」との前提で解説しております。

下見積とは?

「下見積(したみつもり)」とは、発注者である行政機関が、市場価格を把握する目的で事業者に依頼する見積書を指します。

発注の検討段階における市場価格の調査のために用いられるものですので、随意契約で提出の依頼がある見積書とは異なり、調達先決定のための価格競争に用いられることはありません。

下見積と参考見積は同じもの?

「下見積」という言葉の使われ方は行政機関や担当部局によって異なりますが、基本的には「参考見積」と同義で、市場価格を調査するための見積書の意で使用されることが多いようです。

人によっては、「この場合は下見積、あの場合は参考見積」などと下見積と参考見積を明確に区別して使う場合あります。

この記事では「下見積」と「参考見積」を同義語として扱っていますが、実際に行政等から依頼があった場合は「下見積」または「参考見積」の意味を確認しておくと安心です。

正式な発注とは別物である点に注意

いずれの意味で用いられる場合も、下見積は「競争入札の入札書に添付する見積書」や「随意契約における複数社からの見積合わせ」といった契約の相手方を選定するプロセスに活用される見積書とは性質が異なります。

下見積は、見積書という形式でありながら、発注者が発注を前提に依頼しているものではない点に注意が必要です。

提出した下見積は、行政機関が予算要求や事業の仕様を検討することに活用します。下見積を基に市場での調達価格を把握し、事業化の可否や予定価格の決定を行うというのが一般的な流れです。

当然、提出された見積内容がそのまま事業や予定価格に採用されるとは限らず、また見積を提出したからといって必ずしも契約の機会につながるわけではありません。

なぜ下見積・参考見積を求められるのか

下見積(参考見積)は、発注者が市場価格を把握するために取得しています。その背景には財源を効率的に活用するための手続きがあります。

行政機関が物品の購入や業務の委託などを行う際には、調達価格の上限である「予定価格」を定める必要があります。

入札では、予定価格の範囲内で最も低い価格で応札した事業者が落札します。

この予定価格が市場の実勢価格から大きく外れてしまうと、

  • 高すぎる価格で契約し、税金の無駄遣いとなる
  • 逆に安すぎる価格で応札が集まらず、入札が不成立になる

といった事態が発生しかねません。

こうしたリスクを防ぐため、事前に下見積を取得し、実勢に即した価格で予定価格を設定することが重要になります。

下見積は、行政内部での意思決定に用いられる内部資料であるため、公募や契約には直結しませんが、その価格情報は公金の適正な執行を担保するための根幹をなすものと言えます。

下見積を依頼された場合はどうすればよいか?

行政機関から突然「見積書の提出をお願いしたい」と依頼が届いたとき、それが下見積(参考見積)であれば、戸惑いを感じる方も少なくないかもしれません。

正式な契約手続きではないからこそ、どのように対応するのが適切か、判断に迷う場面もあるでしょう。

ここでは、下見積を依頼された際の基本的な対応方針について整理します。

基本的には、見積作成に応じるのがおすすめ

まず前提として、行政から下見積の提出を依頼された場合、原則として協力的に対応することをおすすめします。

下見積は発注者が事業の実現可能性や予算編成を検討するために必要とされる情報です。

提出によってただちに契約に結びつくものではありませんが、今後の入札や随意契約の候補事業者として認識されるきっかけになることもあります。

対応にあたっては、提示された仕様や数量に基づき、実勢価格に沿った見積を作成するのが基本です。

特に、根拠となる積算要素や単価の説明が明確であるほど、行政側でも予定価格の算定に活用しやすくなります。

値引きや特別価格の反映は任意でOK

下見積は正式な発注前の価格調査のため、値引きや特別価格を設定する義務はありません。

もちろん、業務内容や関係性、将来的な受注の可能性を考慮し、自主的に値引きを行うことも可能ですが、それはあくまで事業者側の判断に委ねられています。

特に注意すべきなのは、予定価格の引き上げを狙って、実勢を大きく上回る高額な見積を提示することです。これは、行政側の信頼を損ねる可能性があるため避けるべき対応です。

下見積での価格と落札価格があまりにも乖離していると、行政から「(悪い意味で)適当な見積額を出してくる」などと信頼を損なうことにつながりかねません。

回答を辞退することも可能だが、印象には注意

業務内容が自社の提供範囲外である場合や、繁忙期で期日までの納品が難しい場合など、やむを得ず見積提出を辞退することも可能です。

その際は、無回答ではなく、「今回は事情によりご協力できかねます」といった丁寧な文面で返信するのが望ましい対応です。

無視や遅延対応を避けることで、今後の関係構築にも悪影響を与えにくくなります。

下見積を依頼されることのメリット

下見積(参考見積)の提出は、必ずしも契約や売上に直結するものではありません。
しかし、行政機関から見積の依頼を受けるということ自体が、事業者にとって将来の受注機会を広げる重要なきっかけとなり得ます。

ここでは、下見積を依頼されることで得られる主なメリットについてご紹介します。

行政の動向を早期に把握できる

下見積の依頼が届いたということは、行政機関が近い将来、何らかの調達を予定している可能性が高いことを意味します。つまり、まだ公告されていない段階で案件の存在を知ることができるということです。

通常、案件情報は公告と同時に一斉に公開されますが、見積依頼を受けた事業者はそれより早く、おおよその仕様や数量、納期条件などの詳細を把握できます。

これは、後に実施される入札に向けて事前に準備を進めるうえで非常に有利な状況と言えます。

例えば、下見積の依頼があった場合は、発注機関のホームページやNJSSなどの入札情報サイトサービスで過去の入札案件を確認することをおすすめします。

下見積の依頼があった調達が、定期的に行われているものなのか、新規に実施されるものなのか、他の発注機関でも同様の調達が実施されているのかを把握することができます。

特命随意契約の候補事業者として認識される

調達案件の中には、一定の条件下で随意契約(競争によらない契約)が認められる場合があります。

とくに災害対応や緊急調達、専門性が求められる業務などでは、発注者があらかじめ信頼のおける業者を選定して契約を進める「特命随意契約」が行われることがあります。

こうしたケースにおいては、事前に下見積を提出し、仕様や価格について一定の理解や実績を示した事業者が、そのまま契約先として選定されることもあります。

発注者との関係構築のきっかけになる

下見積は単なる価格提示ではなく、発注者との接点を持つ機会でもあります。提出した見積書の内容が適切かつ丁寧であれば、発注担当者の印象に残り、次回の相談や正式な発注の際に声がかかることも期待できます。

また、行政機関側も「誠実に対応してくれる業者」を把握しておきたいというニーズを持っており、その意味でも下見積への対応は、信頼の蓄積につながる行為と言えるでしょう。

このように、下見積の依頼に応じることは、短期的な契約に直結しなくても、中長期的な視点で見ると新たな受注機会の創出や、発注者との関係強化につながる有意義な活動です。

特に公共調達への参入を広げたいと考えている企業にとっては、下見積の提出が“最初の一歩”となる場面も少なくありません。

下見積の依頼を有効に活用しよう!

行政機関から依頼される「下見積(参考見積)」は、契約先選定に用いられる見積書とは異なりますが、公共調達の現場では非常に重要な役割を果たしています。

発注者が市場価格の妥当性を把握し、適切な予算要求や予定価格の算定を行うために、事業者からの協力が求められる場面です。

下見積の依頼は、単なる事務作業と捉えるのではなく、ビジネスチャンスの一環として捉えることが望ましいと言えます。もちろん、下見積の依頼に応じたことが直接評価される訳ではありません、。今後の案件に関する情報をいち早く得るチャンスであり、発注者との接点を築く貴重な機会でもあります。

下見積の依頼を今後の案件受注につなげるために、見積の依頼内容と同様の案件情報を確認することをおすすめします。

見積内容の案件が定期的に発注されているものなのか否か、また、他の自治体等で類似の案件を調査すると良いでしょう。

特に、当該案件がプロポーザル方式によって実施される可能性がある場合は、提案書作成などの面で、事前に行政の動向や類似案件の仕様を把握できることは大きなメリットです。

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