- 実証実験とは新しい技術やサービスを本格導入する前に、特定の期間・範囲で試行し、効果や運用上の課題を検証する取組
- 行政にとっては「予算化・正式導入の判断根拠」を得るため、企業にとっては「自社サービスの適合性確認」のために行われる
- 「公募型」「提案型」「協定・連携型」の3タイプがある
行政分野では近年、複雑化する社会課題への対応を背景に、民間企業と連携した「実証実験」が多く実施されています。新しい技術やサービスを行政が取り入れる前に、一定の期間・範囲で試行し、効果や課題を検証する取組みです。
本記事では、行政による実証実験の目的や実施の態様、進め方の基本的な流れを整理します。官公庁案件への参入を検討している企業担当者の方に向けて、実証実験をどのように捉え、提案活動に活かすべきかを解説します。
実証実験とは
実証実験とは、新しい技術やサービスが実際の現場で有効に機能するかを確認するために、一定の期間・範囲を区切って試行的に実施する取組みです。机上の検討だけでは分からない運用上の課題や効果を、実際の環境で検証することを目的とします。
行政分野でも近年、デジタル技術の導入や社会課題の解決に向けた取組みについて、正式導入・予算化前に実証実験が行われることがあります。自治体が民間企業と連携しながら新しい取組みを試すケースもあります。
PoC(概念実証)との関係
実証実験とあわせて使われる言葉に「PoC(Proof of Concept)」があります。PoCは日本語で「概念実証」と訳され、新しいアイデアや技術が実現可能かを小規模に検証する取組みを指します。
行政分野では、PoCと実証実験がほぼ同じ意味で用いられることもありますが、一般的には次のような違いがあります。
- PoC:技術的に実現できるか、成立するかを確認する段階
- 実証実験:実際の利用環境で運用できるか、効果が出るかを確認する段階
例えば、システムが動作するかどうかだけでなく、住民サービスとして提供できるか、現場職員の業務負担はどうかといった点まで検証するのが実証実験です。
行政で実証実験が実施される理由・目的
行政分野で実証実験が活用される背景には様々なものが考えられますが、主なものとして、自治体が抱える課題が多様化・複雑化していることや、限られた予算や人員の中で効果的な施策を選択していく必要があることがあります。
ここでは、行政側と、実証実験に参加する民間事業者側それぞれの目的を解説します。
本格導入前に効果と課題を検証し、導入判断の根拠を得る目的
行政サービスは住民生活に直結しているため、新しい仕組みをいきなり本格導入することは難しい場合があります。多額の予算を投じたにもかかわらず十分な効果が得られないことがあってはなりません。
そのため行政では、まず限定的な範囲で実証実験を行い、運用上の課題や改善点を把握したうえで、導入に向けた予算編成の要否を判断することがあります。
実証実験を通じて得られたデータや成果は、そのまま次年度予算要求事務や対外的な説明においても重要な根拠となります。効果を客観的に示すことで、施策として継続すべきかどうかを整理しやすくなります。
民間企業の技術や知見を取り入れるため
行政事業の企画・立案は行政内部で行われますが、複雑化する課題に対して、全て自前で新しい仕組みを開発することは現実的ではありません。
そこで、官民連携の取組みの一環として民間企業の提案・実証実験を積極的に受け入れる制度を設けて、外部の知見を取り入れる取組みも見られます。
新技術の開発に必要なフィールドを提供するため
実証に協力する自治体での取組みに対する示唆以外にも、社会全体にとって有用な新技術の開発に貢献する目的で、行政の有するリソースを民間事業者に提供する場合も見られます。
例えば、公道を活用しての実証実験は民間事業者単独で実施することが難しい場合がありますが、行政と連携して実施に必要な課題をクリアしている場合も見られます。
行政課題に対する自社サービスの適合性を確認するため
行政分野では、民間向けサービスをそのまま導入できない場合があります。
制度や運用、現場業務に合わせた調整が必要になるため、実証実験を通じて適合性を検証することが重要です。
自治体との関係構築や横展開のきっかけとするため
実証実験を通じて自治体現場と連携することで、課題理解が深まり、将来的なサービス改善や他自治体への展開につながる可能性があります。
実証実験のタイプ
行政分野における実証実験は、さまざまな形で実施されています。実証実験という言葉は広く使われていますが、実施に至る経緯や進め方は様々です。
ここでは、官公庁案件への参入を検討する事業者にとって整理しやすいよう、実証実験の実施形態を便宜的に「公募型」「提案型」「協定・連携型」に分けて解説します。
公募型(国・地方自治体による募集)
公募型は、省庁や地方自治体などが主体となり、実証事業を実施する事業者を広く募集する形です。例えば、国のモデル事業や自治体の実証フィールド提供事業などがこれに該当します。
このタイプでは、行政側があらかじめ政策課題や募集テーマを設定し、それに対して民間事業者が提案を提出します。採択された事業者が、一定期間の実証実験を実施する流れとなります。
公募による実証実験では、募集要領や審査基準が設けられることが一般的で、提案の内容が魅力的であっても形式要件に合致しない場合は審査対象となり得ない点に注意が必要です。
一方で、実証に要する経費の一部が委託費や補助金として措置される場合があるので、事業者側の持ち出しリスクを抑えることが期待できます。
提案型(民間事業者から自治体に提案する方法)
提案型は、民間事業者が自治体に対して課題解決策を持ち込み、実証実験の実施につなげていく形です。自治体側が公募を行っていない場合でも、企業提案を契機として実証が始まることがあります。
たとえば、自治体が抱える業務課題や地域課題に対し、企業側がサービスや技術の試行を提案し、双方の合意のもとで実証を実施します。
民間事業者の提案によって実証実験を行う場合、その進め方は自治体ごと、さらには部署の状況によって異なります。自治体との丁寧な対話によって、提案内容が自治体のニーズと合致しなければ実証に至りません。
費用負担については、初期段階では事業者側の負担となる場合が一般的です。ただし、初回実証で一定の成果・示唆を提供することで、事業化・本格導入に向けた更なる実証実験において、予算確保の検討を打診することも現実的となります。また、既存の予算や制度によって、一部の費用負担が可能か検討を促すことも有効です。
協定・連携型(官民連携制度を根拠とする実施)
協定・連携型は、自治体と企業が締結する協定や、既存の官民連携制度を根拠として実証実験を実施する形です。
たとえば、包括連携協定や官民連携プラットフォーム、スタートアップ支援制度などを通じて実証を行うケースが該当します。
協定や制度に基づく実証実験では、当該協定や制度によって実証のテーマが限定されることが一般的です。例えば、住民の健康増進に関する連携協定を基にする場合、「住民の健康増進」以外のテーマで行うことは難しいです。(上述の提案型のような活動が求められます)
以上のように、行政で実証実験に至る流れにはいくつかのパターンがあります。しかしながら、どのタイプであっても、実証実験を実施したからといって発注が確約されるわけではなく、実証後に改めて調達手続が行われる点は注意が必要です。
実証実験の進め方
行政分野における実証実験は、単に現場で試すだけでは十分な成果につながりません。
行政側が導入判断を行えるよう、目的や検証方法を整理したうえで進めることが重要です。
課題の整理と目的設定
まず、解決すべき課題を明確にすることです。行政側は住民サービスや業務運営に関する課題を抱えており、実証実験はその改善策の糸口として提案することが求められます。
この段階では、何を検証したいのか、どのような効果が期待されるのかを整理しておく必要があります。目的が曖昧なまま進めると、行政・民間事業者のどちらも実証で得られた評価を上手く活用できない事態になりかねません。
実証計画の策定(KPI・範囲・体制)
次に、実証実験の計画を具体化します。実証結果が次年度以降の施策判断に影響するため、事前の設計が重要です。
実施期間や対象範囲、役割(負担)の分担はもちろんですが、効果測定する指標(KPI)の設定とその計測方法の検討が重要です。可能な限り具体的・定量的なデータを取ることで、検証できる形にすることが求められます。
実施準備と関係者調整
担当部署だけでなく、関係する部局や施設管理者、場合によっては住民への説明も必要になります。
また、個人情報の取り扱いや法令上の制約、機器設置の条件なども事前に確認しておかなければなりません。準備段階での整理が不十分だと、実施中のトラブルにつながります。
実証の実施とデータ収集
実際の実証では、サービスを提供するだけでなく、検証に必要な情報を適切に収集することが重要です。
利用状況の記録や効果測定に加え、現場職員や利用者の声を把握することも判断材料となります。
評価と成果報告
実証実験の終了後は、実証実験での取組みを整理し、成果を報告します。報告の形式や提出物の要否は案件ごとに異なるため、募集要項や事前の協議内容に沿って対応する必要があります。
報告では、KPIの達成状況に加え、実施を通じて明らかになった課題や改善点を整理し、本格導入の有用性や課題を示すことが重要です。
実証実験は将来の受注獲得に有効か
省庁や自治体からの受注を目指す企業にとって、実証実験は将来の受注につながる可能性はゼロではありません。実証を通じて行政側が導入効果や運用条件を整理できれば、本格導入の検討が進む場合もあります。
ただし、実証実験がそのまま事業化や契約に直結するとは限りません。たとえば、実証結果が良好であっても、制度上の制約がある場合には自治体だけで判断できず、法改正や国レベルでの整理が必要となる場合もあります。
また、本格導入に進む場合でも、行政では公正・公平な手続きが求められるため、改めて入札や公募型プロポーザルなどによって購入先・受託者が選定されることが通常です。実証実験に参加した企業が自動的に受注できるわけではありません。
一方で、実証実験には目に見えにくいメリットもあります。実証を通じて自治体の現場や課題をより具体的に把握できれば、公募型プロポーザルへ参加する際に実情に即した提案を行いやすくなります。現場の運用条件や行政側の意思決定プロセスを理解できることは、提案の説得力を高める可能性があります。
このように、実証実験は受注を保証するものではありませんが、経験や提案力の蓄積につながる取組みといえます。
まとめ
実証実験とは、新しい技術やサービスが行政の現場で有効に機能するかを確認するために、正式導入前に試行的に実施される取組みです。
実証を通じて自治体の現場課題や運用条件を把握できることは、今後の提案活動に活かせる重要な経験となります。
そのため、現在関係がある省庁・自治体のほか、日々公募される実証実験案件についても、幅広く情報収集し機会を逃さないことが重要です。
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