- 委任状は当日その場で行う「再入札」や「辞退」の判断権限が代理人にあることを証明するもの
- 代表者以外の社員が入札会場へ行く場合や、支店長等に契約権限を譲る場合に必要
- 「委任者(代表者)」「受任者(代理人)」「案件名」「委任事項」を明記する場合が多い。
入札に参加する際、代表者以外が手続きを行う場合には「委任状」の提出が必要になります。
しかし、実際には「どんなときに委任状が必要なのか」「どう書けばよいのか」「封筒には何を書けばよいのか」など、迷うことが多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では、入札で必要となる委任状や封筒の書き方を解説します。
もくじ
入札で委任状が必要になるときは?
入札手続きにおいて委任状が必要になるのは、入札に関する権限を有しない者が、会社を代表して手続きを行う場合です。
入札を含む官公庁・自治体に対する事務手続きでは、発信者名が代表権のある代表取締役等の名義を求められることが多いため、この原則を理解しておくことが重要です。
契約権限を委任する場合(営業所長などに)
もっとも典型的なのが、会社の代表者(代表取締役等)が、支店長・営業所長などに契約に関する権限を委任するケースです。
自治体や官公庁の入札では、実務上「営業所単位」での入札参加や契約締結を想定していることも多く、入札参加資格申請時に「契約権者」を設定できる場合があります。
この場合、発注者側から見れば「この人(営業所長)が、会社を代表して入札・契約を進めてよい根拠は何か」を確認する必要があるため、権限の所在を証明する書類として委任状の提出を求められます。
担当社員に、入札会場での再入札などを契約権限者から委任する場合
もう一つが、代表者(または受任者)が入札会場に行けず、担当社員が代理で参加するケースです。
紙入札や会場入札では、当日その場で
- 入札書の提出
- 開札後の再入札
- 辞退手続
など、現場判断を求められる場面が起こり得ます。
このとき、発注者側としては、「その担当社員が、会社としての意思決定(特に再入札の金額決定など)を行えるのか」が不明だと手続きを進められません。
そこで、“当日の入札手続を代理人に行わせる”ことを明示する委任状が必要になります。
委任状が必要かどうかは、必ず入札説明書等を確認する
以上に挙げた事例も含め、委任状の要否・形式は発注機関や案件ごとに扱いが異なります。
必要となる条件、提出タイミング(事前提出/当日持参)、様式(指定様式の有無)、同封書類(入札書と同封・別封)まで細かく指定されることもあります。
入札委任状の基本構成と書き方
ここでは、契約権限者が、担当社員に入札会場での入札・再入札等を委任する場合を想定し、入札委任状に記載すべき内容を整理します。
なお、本項の解説はあくまでも例示であり、実際に作成する際は発注者が指定する内容を必ず確認したうえで作成してください。
①委任者(契約権限者)
委任する側、すなわち会社として入札に関する権限を持つ者を記載します。発注者は、この記載により「誰が会社としての意思決定権を持つのか」を確認します。
一般的には、以下を記載します。
- 会社所在地
- 会社名
- 代表者の職・氏名
- 代表者印(入札参加資格で届け出ている印鑑)
②受任者(代理人・担当社員)
実際に入札会場で手続きを行う担当社員を特定します。
一般的には、以下を記載します。
- 会社所在地
- 会社名
- 所属・職・氏名
③入札案件の特定
「どの入札案件に関して」委任するのかについて記載します。
入札の日付、実施場所、案件名称を特定する記載をします。
実務では、次のような表現がよく使われます。
「○○年○○月○○日に○○市○○部○○課において施行される○○(案件名称)の…」
④対象の入札案件
委任状の中で最も重要な項目です。実際に委任する事項を記載します。
実務では、次のような表現がよく使用されます。
- 「一般競争入札及びこれに付随する一切の行為に関する権限」
- 「入札、再入札、辞退その他当該入札に関する一切の手続」
⑤ 日付・宛先
書類としての体裁を整えるため、委任状を作成した日付と、宛先を記載します。
一般的には、委任状の上部に記載します。
- 日付:入札日以前の日付
- 宛先:○○市長 様、○○町長 様 など発注機関の長
委任状を同封した入札書用封筒の書き方
紙入札で、委任状を入札書とあわせて提出する場合、封筒の書き方も入札手続の一部として扱われます。
前提として、発注者から体裁の指示がある場合は、必ずその指示に従って封筒を作成するようにしましょう。
指示を満たさない場合、書類不備として扱われ、入札参加が認められない可能性があります。
以下では、一般的な入札用封筒の書き方を解説します。
表面に記載する事項
封筒の表面には、発注者が一目で内容を判別できる情報を記載します。一般的には、次の項目です。
・入札日及び案件名称
○○年○○月○○日開札 ○○○○(※事業名)
※入札案件に、工事番号等が設定されていれば、それらも記載すると丁寧です。
・表示文言
入札書及び委任状在中
・差出人(入札者)
会社所在地、会社名、代表者名
・代理人名
裏面に記載する事項と封かん
場合によっては、裏面に差出人・代理人名を記載することもあります。
発注者の指定がなければ、基本的には表面に差出人を記載し、どの者の書類かを分かりやすくしておくこと丁寧です。
裏面には、あわせて、封緘(封かん)と封印を必ず行います。具体的には以下に注意して行います。
- 封筒の開封口をのり付けする
- 継ぎ目にまたがるように印鑑を押す
- 押印する印鑑は、原則として入札書に使用した印鑑と同一のもの
入札に関する委任状・封筒に関してのよくあるミス
入札における委任状や封筒は、内容そのものが評価対象になるわけではありません。
しかし、不備があると入札参加が認められない場合や、入札が無効とされる懸念があるため、作成作業を軽視することはできません。
ここでは、実務で特に起こりやすいミスを「委任状」「封筒」に分けて整理します。
委任状の不備
委任事項が不足している
例えば、「入札に関する行為」とのみ記載し、再入札や辞退などに関する委任関係が不明瞭な場合があります。
発注者側が「当日の再入札に対応できる権限があるか判断できない」として、受理されないことがあります。
再入札が想定される案件では、「入札、再入札、その他当該入札に付随する一切の行為」など、権限範囲を明確かつ幅広に記載する必要があります。
必要事項の記載漏れ・不備扱い
委任者(代表者)の役職や氏名が抜けている、案件名や入札日が記載されていないなど、発注者が委任内容を特定できない委任状は、不備扱いとなる可能性があります。
代理人印と委任状の印が一致していない
入札書では代理人印を使用しているにもかかわらず、委任状が代表者印のみで作成されている、あるいは、指定されている印鑑と異なる印を押していると、形式確認で指摘を受けることがあります。
入札書・委任状・封筒で使用する印鑑が、指示どおり一致しているかは、必ず確認すべきポイントです。
封筒の不備
封印(押印)がない、または不十分
封筒の開封口に封印がない、継ぎ目にまたがっていない、押印がかすれて判読できないなどの場合、不備として入札無効になることがあります。
指定外の封筒サイズ・種類を使用している
入札説明書で「長形3号」「角形2号」など、封筒サイズが指定されているにもかかわらず、別のサイズを使用すると、形式不備と判断される可能性があります。
案件名・契約番号の誤記
封筒表面の件名が略称になっている、契約番号を誤って記載している、あるいは複数案件が判別できない記載になっていると、受付段階で差し戻されることがあります。
入札に関する委任状・封筒に関する事務負担を軽減するコツ
委任状や封筒は、案件ごとに内容を確認する必要がある一方で、毎回ゼロから作成するとミスや手戻りが発生しやすい業務でもあります。
ここでは、事務負担を軽減するための工夫を解説します。
毎回ゼロから作らず、社内でフォーマット化する
有効なのが、委任状と封筒のひな形を社内でフォーマット化しておくことです。
例えば、以下のようにフォーマットを作成しておくことが有効です。
委任状
- 委任者・受任者・委任事項・宛先などの定型文を固定
- 案件名・入札日だけを差し替える形式にする
封筒
- 表面(宛先・「入札書及び委任状在中」・差出人)
- 裏面(代理人の住所・所属・氏名、封印位置)を定型化
フォーマット化しておくことで、書き漏れや表現の揺れを防げるだけでなく、チェックにかかる時間も短縮できます。
なお、発注者が指定様式を用意している場合は、都度その様式を優先する前提でフォーマットを使い分けることが重要です。
まとめ
入札における委任状や封筒の作成で最も重要なのは、発注者ごとの指定に正確に従うことです。
委任状の記載事項や封筒の表記・体裁は、慣例ではなく、必ず当該案件の入札説明書や注意事項に基づいて判断する必要があります。
一方で、複数の入札案件に同時並行で対応していると、
発注者ごとに異なる入札システムやホームページを個別に確認する作業は手間がかかり、確認漏れや転記ミスといった書類作成上のミスを招きやすくなるのも実情です。
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