- 共通仮設費とは工事現場を運営するために現場全体で共通して必要となる仮設的な費用
- 特定の工種に直接紐付かない「間接的」な経費であり、現場事務所、仮囲い、安全設備、光熱水費などが含まれる
- 算定方法には「積み上げ方式」と、「共通仮設費率」を用いる方式がある
公共工事の工事費は様々な費用から構成されており、そのうちの一つに「共通仮設費」があります。共通仮設費は工事現場を運営するために共通して必要となる仮設的な費用ですが、入札参加する際の見積もりなどにおいては、意義や計算方法を理解しておくことが必要です。
本記事では、共通仮設費に含まれる項目、直接仮設費や現場管理費など他の経費区分との違い、算定方法を解説します。公共工事に挑戦される方にとって参考となる内容ですので、是非最後までご覧ください。
もくじ
共通仮設費とは
共通仮設費とは、工事現場を設けて工事を進めるために必要となる仮設的な費用のうち、特定の工種に直接対応しないものを指します。
公共工事の積算では、工事費は「直接工事費」と「共通費」に区分されます。共通仮設費は、この「共通費」を構成する費目の一つです。
国土交通省の「公共建築工事共通費積算基準」では、共通仮設費を「工事を実施するために現場に共通して必要となる仮設的経費」としています。
出典:国土交通省「公共建築工事共通費積算基準(令和7年改定)」
共通仮設費はなぜ必要か
工事では建物そのものの施工に要する費用のほか、工事現場を運営するため仮設設備や環境整備が必要です。
例えば、現場事務所や仮設トイレ、安全設備などは、工事の種類にかかわらず一定程度発生します。
こうした費用は、間接的に施工に必要なものであるので、共通仮設費として費用計上されます。
共通仮設費に含まれる費用の例
共通仮設費には、現場に共通して必要となる仮設設備や安全対策費用が含まれます。例えば次のようなものです。
- 現場事務所などの仮設建物
- 仮囲い、仮設道路などの工事施設
- 防護柵や標識などの安全対策設備
- 工事用電力や用水などの光熱費
- 現場周辺の整理清掃に要する費用
共通仮設費に含まれる費用
国土交通省の「公共建築工事共通費積算基準」では、共通仮設費を次の9区分に整理しています。
共通仮設費の各区分は、工事の規模や現場条件によって必要性や金額が変わります。都市部の狭い現場では仮囲いや安全対策の比重が大きくなり、工期が長い場合は光熱費や仮設建物費が増える傾向があります。
積算では、どの区分に該当するかを整理したうえで、設計図書の条件に沿って計上します。
準備費
準備費は、工事を始める前に現場を立ち上げるための初期対応や、工事終了後の撤去・後片付けに要する費用です。例えば、次のようなものがあります。
- 仮囲いを設置するための位置出しや支柱設置などの初期作業
- 工事看板や注意標識などの掲示物の設置
- 撤去後に現場を引き渡すための最終的な整地・原状回復作業
仮設建物費
仮設建物費は、工事期間中に現場で使用する仮設建物に関する費用です。例えば、次のようなものがあります。
- 現場事務所
- 詰所(作業員の休憩所)
- 仮設倉庫
- 仮設トイレ
工事施設費
工事施設費は、工事を行う際の現場の外周や作業動線を確保するために必要な仮設の施設や設備に関する費用です。例えば、次のようなものがあります。
- 仮囲い
- 仮設道路
- 工事用の出入口設備
- 工事用の足場(※直接仮設費との区分に注意が必要な場合があります)
なお、足場については工事施設費に含まれる場合もありますが、特定の工種の施工に直接必要な足場は「直接仮設費」として計上されることが一般的です。
環境安全費
環境安全費は、現場の安全確保や周辺環境への配慮に要する費用です。例えば、次のようなものがあります。
- 防護柵、安全標識
- 防音・防じん対策
- 交通誘導に関する設備
- 周辺住民への安全対策
動力用水光熱費
動力用水光熱費は、工事現場で使用する電気・水道などの費用です。例えば、次のようなものがあります。
- 工事用電力
- 工事用水
- 現場事務所の光熱費
屋外整理清掃費
屋外整理清掃費は、現場周辺を整理し、清掃を行うための費用です。例えば、次のようなものがあります。
- 現場内外の清掃
- 資材置場の整理
- 工事区域周辺の環境維持
機械器具費
機械器具費は、現場に共通して必要となる機械や器具に関する費用です。
- 仮設設備の設置に用いる機械器具
- 現場で共通的に使用する小型機材
情報システム費
情報システム費は、工事現場の運営に必要となる情報通信機器やシステムに関する費用です。情報共有、遠隔臨場、BIM、その他システム・アプリケーションの費用が該当します。
近年は遠隔臨場や電子納品への対応が求められる場面もあり、現場での通信環境整備や端末費用が発生することがあります。
その他
その他は、上記の区分に当てはまらない共通仮設的経費です。国土交通省の「公共建築工事共通費積算基準」では、「材料及び製品の品質管理試験に要する費用」がその他に区分されると説明されています。
共通仮設費と混同されやすい費用との違い
共通仮設費と似た名称の費目として、「直接仮設費」「現場管理費」があります。ここでは、混同されやすい「直接仮設費」「現場管理費」との違いと、「共通費」との関係を解説します。
直接仮設費との違い
直接仮設費は、特定の工種や施工内容に直接必要となる仮設的な費用です。共通仮設費が「現場全体で共通して必要となる仮設費用」であるのに対し、直接仮設費は「施工対象に直接結びつく仮設費用」として整理されます。
例えば、現場事務所や仮設トイレは工事全体で共通して必要な施設のため「共通仮設費」に区分することが一般的ですが、外壁工事のために設置する足場は特定の工種の施工に直接必要となるため「直接仮設費」となります。
現場管理費との違い
現場管理費は、工事現場を運営・管理するために必要となる費用です。
共通仮設費が、現場事務所や仮囲いなど「仮設設備」に関する費用であるのに対し、現場管理費は、工事を進めるための管理業務や現場運営に伴って発生する経費を整理したものです。
例えば、現場管理費には次のような費用が含まれます。
- 労務管理に要する費用(募集に要する費用、研修訓練、安全衛生に関する費用など)
- 租税公課・保険料(工事契約書の印紙代、諸官公署への手続き費用など)
- 現場従業員の給料手当(現場に配置される元請企業の社員や、現場で臨時に雇用する従業員の給与、諸手当、賞与など)
- 施工図等作成費(施工図や完成図の作成に要する費用)
- 法定福利費・福利厚生費
- 事務用品費
- 通信交通費
- 補償費(工事施工に伴う騒音・振動、工事車両の通行などに対する近隣の第三者へ補償)
現場管理費の算定は、共通仮設費と同様に費用を積み上げにより算定するか、過去の実績 等に基づく純工事費に対する比率(現場管理費率)により行うこととされています。
共通費と共通仮設費との関係
「共通仮設費」は、「現場管理費」「一般管理費等」とともに「共通費」を構成します。
共通仮設費と現場管理費はいずれも現場に関わる経費ですが、積算上は「設備(仮設物)」と「管理(人件費・事務費)」で役割が分けられています。例えば、現場事務所の設置は共通仮設費に含まれる一方、現場従業員の給料手当や施工図作成費は現場管理費に整理されます。
また、一般管理費等は現場で発生する経費ではなく、本店・支店の管理部門にかかる間接経費や付加利益等について、工事原価に対する比率により算定するものです。
共通仮設費の算定方法
共通仮設費は、費用を積み上げにより算定するか、過去の実績等に基づく直接工事費に対する比率(共通仮設費率)により算定することとされています。
積み上げによる算定
共通仮設費に含まれる費用を項目ごとに算出し、合計して求める方法です。現場条件が特殊で標準的な率では整理しにくい場合などに用いられます。
例えば、共通仮設費の内訳として挙げられる現場事務所などの仮設建物費、仮囲い・仮設道路などの工事施設費などを個別に見積もり、合計します。
共通仮設費率による算定
共通仮設費率は、「公共建築工事共通費積算基準(令和7年改定)」によって工事種別(新営・改修など)や工種に応じて定められています。
「公共建築工事共通費積算基準」では、新営建築工事の場合の共通仮設費率(Kr)について、別表に算定式が示されており、以下の内容です。
Kr=Exp(3.346−0.282×logeP+0.625×logeT)
※Kr:共通仮設費率(%)、P:直接工事費(千円)、T:工期(か月)
この算式から分かるとおり、共通仮設費率は単純に一定ではなく、直接工事費(P)の規模と工期(T)の長さに応じて変動します。工事規模が大きいほど仮設費の割合は相対的に低下し、工期が長いほど現場を維持する経費が増えるため率が高くなる仕組みになっています。
共通仮設費率方式は標準的な積算に広く用いられますが、特殊な仮設設備が必要な場合は積み上げで別途整理することもあります。
まとめ
共通仮設費とは、工事現場を運営するために現場に共通して必要となる仮設的な費用です。公共工事の積算では、「現場管理費」「一般管理費等」とともに共通費を構成します。
共通仮設費を構成する項目として、準備費、仮設建物費、工事施設費、環境安全費、動力用水光熱費、屋外整理清掃費、機械器具費、情報システム費、その他があります。
共通仮設費を算出する方法は、上記の各項目の費用を積み上げていく方法のほか、国土交通省の積算基準で示されている共通仮設費率方式によって算定する方法があります。共通仮設費率による算定式では、工事規模の大小や工期の長短に応じて共通仮設費が変動します。
共通仮設費は工事費全体の中では間接的な費目ですが、工事条件によって変動しやすい部分でもあります。公告や仕様書で求められる仮設条件を確認し、積算基準に沿って内訳を整理することが見積作成の基本です。
公共工事に参入する際には、こうした積算項目の基本を理解したうえで、案件ごとの仕様や条件を確認しながら見積を作成することが重要です。
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