経営事項審査(経審)の点数アップに有効な資格とは?

経営事項審査(経審)の点数アップに有効な資格とは?

Point

  • 経審の「技術力(Z点)」と「社会性等(W点)」で資格が加点される
  • 上位資格の取得や監理技術者講習の受講が有効
  • 戦略的な資格取得・採用と費用対効果の検討が重要

建設業者が公共工事を受注するために欠かせない「経営事項審査(経審)」では、資格による加点が点数アップに直結する重要な要素です。

本記事では、経審における資格加点の仕組みから、実際に加点対象となる資格一覧と補正係数、加点を最大化するための戦略まで、実務に即してわかりやすく解説します。

経営事項審査の点数と資格加点の仕組み

経営事項審査(通称:経審)は、公共工事の入札に参加する際に必要な審査制度で、建設業者の経営状況や技術力、社会性などを総合的に評価する仕組みです。これは、建設業法第27条の23および国土交通省令「経営事項審査規則」などを根拠としています。

評価結果である「総合評定値(P点)」は、入札参加資格に係る「格付け」に影響を及ぼします。

経営事項審査の点数

経審の総合評定値(P点)は、以下の5要素から計算・構成されています。

総合評定値(P点)の計算式

P点 = 0.25×X1 + 0.15×X2 + 0.20×Y + 0.25×Z + 0.15×W

各要素の説明

要素 内容 ウエイト
X1 完成工事高評点 25%
X2 自己資本額・平均利益額評点 15%
Y 経営状況評点 20%
Z 技術力評点 25%
W その他社会性等評点 15%

このうち資格による加点が見込めるのはZ点(技術力評点)とW点(社会性等評点)です。

資格加点が反映されるのはZ点とW点

資格の保有は主に「Z点(技術力)」で評価され、一部は「W点(その他)」で加点されます。

Z点(技術力)は、技術職員の資格の種類と人数が評価対象になる「技術職員数評点(Z1点)」と、直前2年または3年の業種別年間平均元請完成工事高の大小が評価される「元請完成工事高評点(Z2点)」の2つで構成されます。このうち、資格により加点が見込まれるのはZ1点です。

技術力評点の計算式

技術力評点Z点=(技術職員数点数Z1点×4+元請完工高点数Z2)÷5

Z1点では、技術職員数が多いほど基本的に評価が高くなる仕組みです。業種ごとに定められた資格ごとの配点をもとに、各技術職員に対して点数を割り当て、それらを合計したものが「技術職員数値」となります。この数値を評点換算用のテーブルに当てはめることで「Z1点」が算出されます。

したがって、資格者の人数が直接Z1点の向上に寄与するのではなく、技術職員数値を引上げることによって評点テーブル上での該当区分が上位になることでZ1点が高くなります。

W点(社会性等評点)は、労務安全・法令遵守状況・建設業経理士資格の保有・ISO認証の取得状況などが含まれます。

W点の資格評価は、人数ではなく「資格の有無」や「体制整備状況」による加点が基本です。たとえば、建設業経理士の保有は、会社の財務管理体制の整備度を示す要素として評価されます。

経審で加点に影響する資格一覧と点数

Z点(Z1点)及びW点で資格が加点される仕組みは、いずれも資格(者)の種類・人数によって点数を求め、その合計点数を評点テーブルに当てはめてZ1点・W点を算出します。

ここでは、加点に寄与する主要な資格と点数を示します。
なお、Z1点で加点に寄与する資格の一覧は記事の最後に紹介していますので、併せてご覧ください。

Z点で加点に寄与する資格の例

Z点(Z1点)で各資格がどの程度配点されるのかは、経審申請する業種・資格の種類や級によって異なります。

一般的には、より高度な資格・上位級の資格ほど配点が高い傾向にありますが、申請業種に資格ごとの対象業種がなければ配点の対象になりません。

技術職員点数の資格区分は、以下の6つに区分されています。

一級監理者 6点
一級技術者であって一級監理者以外の者 5点
監理技術者を補佐する資格を有するもの 4点
基幹技能者であって一級技術者以外の者の人数 3点
二級技術者 2点
その他技術者 1点

配点の対象となる主な資格の例と、対象業種、点数を紹介します。

関係法 資格名称 対象業種 点数
建設業法 一級建設機械施工技士 土と舗
建設業法 二級建設機械施工技士 土と舗 2
建築士法 一級建築士 建大屋タ鋼内
建築士法 二級建築士 建大屋タ内
技術士法 建設・総合技術監理(建設) 土と電舗しゅ園解
電気工事士法 第一種電気工事士
電気通信事業法 電気通信主任技術者
消防法 甲種消防設備士
水道法 給水装置工事主任技術者
職業能力開発促進法 造園(1級) 2
職業能力開発促進法 造園(2級) 1

例えば、建設業法に基づく「一級建設機械施工技士」は「一級技術者」であり、「土木工事業」「とび・土工工事業」「舗装工事業」の3業種において5点とされています。このうち、監理技術者資格者証を保有していて、かつ、監理技術者講習修了証を保有している人の場合は「一級監理者」として6点になります。

※対象資格、点数は2025年7月時点での情報です。
※対象業種欄の略称は以下のとおりです。

土木工事業(土)
建築工事業(建)
大工工事業(大)
左官工事業(左)
とび・土工工事業(と)
石工事業(石)
屋根工事業(屋)
電気工事業(電)
管工事業(管)
タイル・れんが・ブロック工事業(タ)
鋼構造物工事業(鋼)
鉄筋工事業(筋)
舗装工事業(舗)
しゅんせつ工事業(しゅ)
板金工事業(板)
ガラス工事業(ガ)
塗装工事業(塗)
防水工事業(防)
内装仕上工事業(内)
機械器具設置工事業(機)
熱絶縁工事業(絶)
電気通信工事業(通)
造園工事業(園)
さく井工事業(井)
建具工事業(具)
水道施設工事業(水)
消防施設工事業(消)
清掃施設工事業(清)
解体工事業(解)

W点で加点される資格

W点のうち、資格による加点があるのはW5点(建設業経理点数)です。W5点は、「監査の受審状況点数」と「公認会計士等数点数」を加算したものです。

このうち「公認会計士等数点数」は、以下の計算式で算出した数値を所定の算出テーブルに当てはめて算出します。点数は、平均完成工事高に応じて10点から0点の範囲となります。

◆(公認会計士等の数)×1+(二級登録経理試験合格者数)×0.4
※以上で算出した点数を、所定の算出テーブルに当てはめる(10~0点)

このうち、「公認会計士等」に該当する資格及び「二級登録経理試験合格者(二級建設業経理士)」が加点に寄与する資格となります。

W点(W5点)で加点に寄与する公認会計士等に該当する資格は以下の通りです。

項目 資格
公認会計士等 公認会計士
税理士
一級建設業経理士
二級登録経理試験合格者 二級建設業経理士

資格による加点を最大化するポイント

経営事項審査における資格加点を最大限に活用し、総合評定値の向上を図るためには、戦略的な取り組みが不可欠です。以下に、その具体的なポイントを挙げます。

一級資格者への監理技術者講習受講の徹底

一級建築士や1級施工管理技士などの一級資格者には、監理技術者講習の受講を徹底させることが重要です。
監理技術者講習を受講・修了し監理技術者資格者証を保有することで、Z1点の算定が5点から6点になります。

技術職員により上位資格取得を促す

既存の技術職員に対して、現在保有している資格よりも上位の資格取得を奨励することも有効な戦略です。例えば、二級土木施工管理技士が一級土木施工管理技士の資格を取得することで、「土木工事業」等の業種で2点から5点に配点が上がります。
企業として資格取得費用の一部補助や学習時間の確保など、取得に向けた支援体制を構築することが、従業員のモチベーション向上にもつながります。

資格者の採用と定着

新たな資格保有者を採用することは、短期間でZ点を向上させる直接的な方法です。特に、技術士や一級建築士、1級施工管理技士など、加点幅の大きい上位資格者を計画的に採用することで、総合評定値への影響を最大化できます。

また、採用した資格者が長期的に企業に定着するよう、適切な待遇やキャリアパスの提示、働きやすい職場環境の整備など、定着に向けた取り組みも同時に進めることが重要です。

費用対効果の検討

資格取得や資格者の採用には費用が発生するため、投資に対する加点効果を事前に十分に検討する必要があります。

例えば、特定の資格取得に多額の費用を投じたとしても、結果的に上位の格付けを取得できるほどの総合評定値の獲得が期待できないと見込まれる場合は、再考が必要です。

自社の現在の評点や目標とする評点、および目指す入札案件のランクなどを総合的に考慮し、最も費用対効果の高い資格加点戦略を立案することが、効率的な経営に繋がります。

これらのポイントを戦略的に実行することで、経営事項審査における資格加点を最大化し、公共工事の入札における競争力強化を図ることができます。

経審点アップに有効な資格

経営事項審査の点数アップを目指す上で、資格取得は重要な戦略の一つです。

特に技術力(Z点)と社会性等(W点)の向上に有効な資格を戦略的に取得することで、総合評定値の引き上げを図ることが可能になります。

技術力向上に直結する資格選定

技術力評価(Z点)は、技術職員の保有資格や人数に基づいて評価される項目で、経審評点全体の約25%を占める重要な指標です。

Z点を効果的に向上させるためには、自社が取得している建設業許可業種に対応する資格、特に加点幅の大きい上位資格の保有が有効です。

例えば、土木一式工事を主とする企業であれば、1級土木施工管理技士や技術士(建設部門)などの資格保有者を増やすことが挙げられます。また、建築一式工事に強みを持つ企業であれば、一級建築士や1級建築施工管理技士が有効です。

さらに、今後参入を検討する分野に関連する資格を計画的に取得・配置することも、将来的な受注機会拡大に繋がります。例えば、再生可能エネルギー関連工事への参入を目指す企業であれば、電気工事施工管理技士や電気主任技術者といった資格の取得を推進することが有効な戦略となります。

経営管理能力を示す資格の活用

上述のとおり、企業の経営管理能力や社会性を示す資格も経審点アップに寄与します。
特に、W点(その他)の項目である「建設業の財務状況」では、建設業経理士(1級または2級)の資格保有者数が評価対象となります。

W点は比較的取り組みに対する加点が大きい傾向があるため、経理部門での資格取得推進も有効な戦略です。
建設業経理士の資格保有は、会社の財務管理能力が高いことを客観的に示し、公共工事の発注者からの信頼性向上に寄与します。

このように、技術系・非技術系の資格を組み合わせた加点戦略は、技術力の証明に加え、経営基盤や内部統制のアピールにも直結する強力な手段となります。
総合評定値を引き上げるためには、技術職員の資格構成の見直しに加え、経理部門など非技術系資格の活用も含めた全社的な取り組みが不可欠です。

まとめ

本記事では、公共工事の入札参加に不可欠な経営事項審査(経審)において、資格がいかに総合評定値の向上に寄与するかを詳細に解説しました。

経審の点数は、企業の経営規模、経営状況、技術力、その他の要素を総合的に評価して算出されます。
特に技術力(Z点)と社会性等(W点)は、技術職員が保有する資格によって大きく加点される項目です。
技術士や一級建築士、各種施工管理技士といった技術系資格はZ点に、建設業経理士などの資格はW点にそれぞれ影響を与え、総合評定値の向上に直結します。

資格による加点を最大化するためには、単に資格者を増やすだけでなく、より上位の資格取得を奨励すること、監理技術者講習の受講を徹底すること、そして適切な資格者を戦略的に採用し定着させることが重要です。

また、資格取得や人材投資には費用が伴うため、費用対効果を慎重に検討し、自社の目標に合わせた最適な戦略を立てる必要があります。

また、経審の点数を高めることは、入札における競争優位性を確立するための重要です。企業の技術力と経営管理能力を客観的に示す指標として、資格を戦略的に活用することは、官公庁案件獲得の機会に繋がります。

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