PFIとは?簡単に理解するための基礎知識と他の制度との違いを解説

PFIとは?簡単に理解するための基礎知識と他の制度との違いを解説

Point

  • PFIとは民間の資金、技術、ノウハウを活用して公共施設の整備から維持管理、運営までを一体的・長期的に行う官民連携の手法
  • 行政の財政負担を長期に平準化すること、および民間の創意工夫を活かすことで公共サービスの質の向上を目指す
  • PFIは公共サービスの連携全般を指すPPPの一部であり指定管理者制度とは異なる

PFI(Private Finance Initiative)は、「公共施設を民間の資金やノウハウを活用して整備・運営する仕組み」です。

従来のように行政がすべてを発注・管理する方式とは異なり、民間が設計から建設、維持管理、運営までを一体的に担う点が特徴です。

本記事では、「PFIとは何か」「どのような方式があるのか」「メリットと課題」「他制度との違い」を、専門用語を最小限に抑えながら分かりやすく整理します。

特にPFIの概要を簡単に把握したい方におすすめの内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

PFIとは何か

PFIの定義と仕組み

PFI(Private Finance Initiative)とは、公共施設の整備や運営に、民間の資金力やノウハウを取り入れるための官民連携の手法です。

日本では1999年に「PFI法(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)」が制定され、以降、庁舎・学校・病院・公園・上下水道など多様な公共施設に活用されています。

PFIでは、行政が提供したいサービス水準を要求水準書として示し、その水準を満たすための具体的な施設整備や運営方法は民間が企画・実施します。

行政は、完成した施設と提供サービスの品質を評価(モニタリング)し、長期間にわたり対価を支払います。
これにより、行政は自ら資金調達や細かな管理業務を行う負担が軽減され、民間の創意工夫を取り入れやすくなります。

PFIが導入された背景

PFIが注目された背景には、財政負担の平準化とサービス水準の向上という2つの課題があります。従来方式では、大規模施設の建設費を初年度に計上するため、特定年度の財政負担が急増する問題がありました。PFIでは、民間が資金を調達して施設を整備し、行政が事業期間にわたってサービス対価を支払うため、財政負担を長期に分散しやすくなります。

また、設計段階から民間が参画することで、運営効率やライフサイクルコスト(LCC)を踏まえた工夫が可能になります。これにより、維持管理がしやすい設備の選定や、利用者目線を反映した施設設計が実施されやすくなるなど、公共サービスの質向上が期待されています。

「民間委託」とPFIはどこが違うのか

PFIは、一般的な「委託契約」と混同されやすい方式ですが、両者は目的も担当範囲も異なります。

民間委託は、行政が整備した施設の運営や管理業務の一部を民間に任せる方式です。一方、PFIは、施設整備から運営までの一連の業務を民間が一体的に担う点に特徴があります。

PFIで民間が担う役割

PFIでは、民間事業者が公共施設の整備から運営までを一体的に担います。

従来の分離発注方式では、設計・建設と運営が別々の契約で行われてきましたが、PFIでは事業全体を民間が統合的に実施する点に特徴があります。ここでは、PFIにおける民間の主な役割と、それがもたらす効果について整理します。

設計から運営までを民間がまとめて実施する仕組み

PFIでは、民間が施設の設計、建設、維持管理、運営を通して行います。
このため、運営段階を見据えた設計が行いやすく、維持管理のしやすさやコスト低減に配慮した工夫を盛り込みやすくなります。

長期事業であることから、ライフサイクルコストを最適化する視点が取り入れられる点もPFIの特性です。

従来方式(分離発注)との違いとPFIの効果

従来の分離発注では、設計者・施工者・運営者が別の組織となるため、工程をまたいだ調整が難しい場合があります。

これに対してPFIでは、民間が事業全体の責任を負うため、各工程を一貫して最適化しやすくなります。

施設の使いやすさや維持管理の効率化といった改善が行われることで、長期的にはサービスの質の向上やコストの縮減が期待されます。

行政は要求水準の設定と評価を担当する

行政は、施設で提供すべきサービスの内容や品質を「要求水準書」で示し、民間が提供するサービスを評価します。民間の自由度は高い一方で、行政はモニタリングを通じてサービス水準の維持を図る役割を担います。

民間の創意工夫が生かされやすい環境

設計段階から運営まで民間が関与するため、利用者の利便性向上につながる工夫や、維持管理を見据えた設備選定などが事業全体に反映されやすくなります。

こうした仕組みが、PFIで期待されるサービス改善の根拠となっています。

PFIのメリット

PFIは、行政と民間が長期間にわたり協力して公共サービスを提供する仕組みであり、双方にとってメリットがあります。

行政側のメリット:財政負担の平準化とサービス品質の向上

PFIでは、民間が資金を調達して施設を整備し、行政は長期にわたり対価を支払う仕組みを採用します。

これにより、施設建設時の一時的な財政負担を平準化しやすくなります。年間予算の変動が小さくなるため、大規模施設の整備計画を立てやすい点が特徴です。

また、民間が設計段階から参画するため、運営効率や維持管理を考慮した工夫を取り入れやすくなります。行政はサービス水準を示すだけでよいため、限られた職員数の中でも質の高い公共サービスを提供しやすくなります。

民間側のメリット:長期契約による安定収入と事業機会の拡大

PFI事業は一般に10〜30年の長期契約となるため、民間にとっては安定した収入が見込めます。

建設業務だけではなく、維持管理・運営業務も含まれるため、複数領域での収益を得られる点が魅力です。

さらに、長期的な運営が求められるため、設計・建設時に自社の工夫を反映しやすく、サービス改善による評価向上など、取り組み次第で追加的な価値を生み出しやすくなります。

PFIのデメリット・課題

PFIは行政・民間双方にメリットがありますが、導入に際しては注意すべき課題もあります。

仕様・契約が複雑で調整に時間がかかる

PFI事業では、設計・建設・維持管理・運営を一括で契約するため、通常の工事契約に比べて仕様書や契約書が複雑になります。

行政は要求水準を過不足なく示す必要があり、また、民間も長期事業として成立させるために細かなリスク分担や費用構造の検討が欠かせません。

そのため、事業化までに相応の調整期間を要するケースが多くみられます。

民間の初期投資負担と長期リスク

施設整備のための資金調達は民間の責任で行われるため、初期投資リスクが大きくなります。金融機関からの借入条件や金利変動、長期収支の見通しに左右される要素も多く、事業開始段階でのハードルは低くありません。

また、事業期間が10〜30年と長期に及ぶため、事業開始時以降の環境変化や利用者数の増減、維持管理費の予想外の上昇など、将来にわたる不確実性も民間にとってリスクとなります。

行政側の負担増加の可能性

行政もPFIを導入すれば負担が軽くなるというわけではありません。要求水準の設定が不適切であれば、サービスの質が十分に確保できないだけでなく、追加工事や変更契約によって逆にコストが増える可能性があります。

また、契約期間中のモニタリングや評価業務にあたり、専門知識を持った職員の確保も課題です。平時の運営業務を民間が担うため、行政側も知識・ノウハウの維持・継承を積極的に行う必要があります。

長期事業ゆえの柔軟性の低さ

PFIは長期間の契約を前提とするため、利用者ニーズの変化や社会状況の変化に迅速に対応しづらい側面があります。

人口減少による利用者数の減少、災害・感染症などの予測困難な事象が生じた場合、契約内容の見直しが必要になり、それが行政・民間双方の負担となる場合があります。

PFIの代表的な方式

PFIには、施設の所有権や移転時期の違いによって複数の方式があります。
方式が複数存在するのは、施設の種類・財源構造・行政が求める管理水準が異なるためです。施設の性質に応じて方式を選ぶことで、PFIの効果を最大化できる構造になっています。

 BTO(Build-Transfer-Operate)

BTO方式では、民間が施設を建設した後、所有権は行政へ移転します。そのうえで、民間が運営・維持管理を続けます。

行政が所有者となるため、公園・図書館・学校など「公共性の高い施設」で採用されるケースが多く、民間にとっては建設・運営の対価を安定的に受け取れる点がメリットです。

 BOT(Build-Operate-Transfer)

BOTは、民間が建設した施設を一定期間所有し、運営・維持管理を経て、契約期間終了時に行政へ移転する方式です。

民間が所有者としてリスクを負いつつ長期間事業に携わる構造のため、収益施設(駐車場、スポーツ施設等)で採用されるケースがあります。

 BOO(Build-Own-Operate)

BOO方式では、施設の整備・所有・運営をすべて民間が行います。契約期間終了後も所有権を行政に移転しない点が特徴で、民間の裁量が最も大きい方式です。

独自性の高いサービスを導入しやすい反面、民間の負担やリスクが大きくなるため、事業性が明確な案件に向いています。

 ROT(Rehabilitate-Operate-Transfer)

ROTは、既存施設を民間が改修(Rehabilitate)し、そのまま運営する方式です。建設から行うBTO・BOTに比べて初期投資が抑えられる点が特徴で、老朽化した公共施設の再生に適しています。

行政にとっては、更新費の平準化や施設の延命が期待でき、民間にとっては大規模建設より参入しやすい方式です。

PFIとPPP・指定管理者制度との違い

PFIは官民連携の手法のひとつですが、他の官民連携手法として「PPP」や「指定管理者制度」があります。

ここでは、その違いを整理します。

「PPP」は官民連携の総称

PPP(Public Private Partnership)は、公共サービスの提供に民間の力を取り入れる取り組み全般を指す広い概念です。

したがって、「PFI」「指定管理者制度」はPPPの概念に含まれる方式です。

指定管理者制度は“運営のみ”を民間に委ねる仕組み

指定管理者制度は、地方公共団体が管理する公共施設(体育館・公園・文化施設など)の運営を民間事業者に委託する制度です。

施設の整備や所有は行政が担い、民間は運営や管理業務だけを担当します。
民間にとっては、行政から支払われる管理委託料・運営収益と、運営に要する費用を勘案してそのメリット等を判断していくことになります。

契約期間も数年程度と、比較的短いことが多い制度です。

まとめ

PFIは、民間の資金・技術・運営力を活用して公共施設を整備・運営する官民連携の仕組みです。設計から運営までを一体的に担うことで、施設のライフサイクル全体を踏まえた改善や、利用者目線のサービス向上が期待できます。一方で、契約が複雑になることや、民間が長期的な事業リスクを負う点など、導入に際して検討が必要な課題もあります。

PFIにはBTO・BOT・BOO・ROTといった複数の方式があり、施設の性質や事業目的に合わせて選択されます。また、PPP全体の枠組みの中では、PFIのほかにも指定管理者制度など、目的に応じた多様な手法が存在します。

行政が抱える財政負担やサービス品質の課題に対して、PFIは有効な選択肢のひとつです。メリットとデメリットを理解し、事業の特性に応じた制度設計を行うことで、行政・民間・利用者のいずれにもプラスとなる公共サービスの提供につながります。

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