工事成績評定とは?点数の決まり方と高める具体策を解説
- 工事成績評定は発注者が工事の施工状況や品質を点数化する制度
- 公共工事の品質確保や、透明性・公正な競争の促進が目的
- 国土交通省の基準では、「施工体制」「施工状況」「出来形・出来ばえ」など複数の項目で加減点を行い、65点を基本として算出される
工事成績評定は、完成した工事の施工状況や品質を点数として整理する制度です。その結果は工事単体の評価にとどまらず、工事入札制度のさまざまな場面で活用されています。
一方で、工事成績評定ではどのような事項が評価されるのか、優良工事の点数の目安など詳しくは把握されていない方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、工事成績評定の基本的な仕組み、点数の決まり方、入札制度との関係、評定を高める工夫について解説します。
これから公共工事への参加を検討している事業者の方や、入札戦略を見直したい担当者の方は、是非最後までご覧ください。
もくじ
工事成績評定とは?
工事成績評定の定義
工事成績評定とは、国土交通省等の各省庁や地方自治体などの各発注者が、請負工事の施工状況や完成した工事目的物の品質等を評価する制度です。
工事成績評定は、平成13年に施行された、いわゆる入札契約適正化法(公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律)に基づき制定された「公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針」(以下、指針という。)において、実施が規定されています。
工事成績評定の目的
工事成績評定の目的は、以下の点にあります。
- 契約の適正な履行の確保、確認
- 公共工事の品質確保
- 受注者の適正な選定の確保
また、工事成績評定が入札契約適正化法に基づくものであることを踏まえれば、同法第3条各号に掲げる以下の目的もあると言えます。
- 入札及び契約の過程並びに契約の内容の透明性の確保
- 事業者間の公正な競争の促進
- 入札及び契約からの談合その他の不正行為の排除の徹底
- ダンピング受注の防止、
- 契約された公共工事の適正な施工の確保
工事成績評定は、公共工事が国民生活の基盤を整備するものであることを踏まえ、効率的な施工に対して積極的に評価し、また粗雑な工事に対しては厳正に対応することで、公共工事の適正さを確保し、また建設業の健全な発展も確保しようとする取組みです。
工事成績評定の対象工事
工事成績評定の基準は、発注者がそれぞれ定めています。そのため、評定の対象となる工事の条件も、各発注者により異なります。
例えば、国土交通省(地方整備局)が発注する工事は、原則として「1件の請負金額が500万円を超える請負工事(及び当該工事の入札時又は契約締結後に受け付けた技術提案)」とされています。
なお、上記に該当するものであっても、電気・ガス・水道又は電話の引込工事等で地方整備局長が必要がないと認めたものについては、評定を省略することができるとされています。
(出典)「請負工事成績評定要領」(平成13年3月30日国官技第92号)
地方自治体における工事成績評定の対象工事は、上述の国土交通省の要領と同様に、1件の請負金額が500万円以上の請負工事とされている場合が多く見られます。
(例)
- 長野県「工成績評定要領」
- 新潟県「土木部請負工事成績評定実施要領」
また、東京都 (対象工事:起工金額400万円以上)のように、国土交通省水準よりも高い水準(幅広く対象)としている自治体もあります。
工事成績評定の点数の決まり方
工事成績評定で評価される項目は、上述のとおり発注者ごとに基となる要領等が異なるたため、発注者によって違いがあります。
ここでは、国土交通省地方整備局が発注する工事を例に解説します。
工事成績評定の主な評価項目
国土交通省の各地方整備局が発注した工事では、以下の項目で成績評定が実施されます。
| 考査項目 | 細別 | 評価内容 |
|---|---|---|
| 1.施工体制 | Ⅰ.施工体制一般 | 施工計画書の着工前提出 施工体制台帳・施工体系図における作業分担範囲の明確化 施工計画書と現場施工方法の一致 など |
| Ⅱ.配置技術者 | 必要な専門技術者等の配置 現場代理人、監理技術者の評価 など |
|
| 2.施工状況 | Ⅰ.施工管理 | 工事材料の品質管理 日常の出来形管理 工事打合せ簿の整理 など |
| Ⅱ.工程管理 | 実施工程表の作成及びフォローアップによる工程管理 施工の遅滞の有無 計画工程以外の時間外作業の有無 など |
|
| Ⅲ.安全対策 | 災害防止協議会等の1回/月以上の実施有無 安全教育の実施有無 過積載防止の取り組み状況 など |
|
| Ⅳ.対外関係 | 関係官公庁、地元との調整・トラブル発生の状況 苦情の有無、もしくは苦情に対する適切な対応 など |
|
| 3.出来形及び出来ばえ | Ⅰ.出来形 | 出来形測定が基準に基づき行われているか 測定値のばらつきの程度 |
| Ⅱ.品質 | 品質の測定が基準に基づき行われているか 測定値のばらつきの程度 |
|
| Ⅲ.出来ばえ | - | |
| 4.工事特性 | Ⅰ.施工条件等への対応 | 構造物、作業環境、自然条件等への対応要否 |
| 5.創意工夫 | Ⅰ.創意工夫 | 施工、品質、安全衛生、新技術活用における工夫の内容 |
| 6.社会性等 | Ⅰ.地域への貢献等 | 周辺環境への配慮 など |
| 7.法令遵守等 | 法令順守の状況 |
(出典)国土交通省「地方整備局工事成績評定実施要領」
実際には、要領で考査項目別の運用表があり、どういった事項を評価していくのかが定められています。
各考査項目の評価は、最上位の「a」評価から「e」評価まであります。これらの評価に応じて加減点が定められています。
最終的に、65点に各考査項目の加減点を合計して評定点となります。
優良工事の目安(表彰例から)
工事成績評定の運用にあたっては、その目的である「公共工事の透明性の確保」や「民間事業者の技術力の向上」のために、「優良工事」「優秀企業」等の表彰制度が各発注者にて行われていることがあります。
各発注者により、優良工事の基準は異なりますが、概ね75点以上の場合に優良・良好と扱われることが多いです。
例えば、東京都武蔵野市では、前年度に完了した工事のうち、「評定点が90点以上でかつ特他の模範となる優秀な工事」と認めるものに表彰をおこなっています。
また、事業者表彰の例として、国土交通省関東地方整備局の「請負工事成績優秀企業認定」として、過去2カ年度に関東地方整備局発注の土木工事の工事成績評定結果を基に、受注企業ごとの工事成績評定点の平均点を算出して、表彰を行っています。
この制度では、優良工事企業の選定方針として「工事成績評定の平均点が80点以上の企業」とされています。
工事成績評定が関係する制度
工事成績評定の点数は、評定制度の目的である「公共工事の透明性の確保」や、評価を通じた「民間事業者の技術力の向上」のみに影響するのではなく、工事入札全般に影響を及ぼします。
入札参加資格での格付け
各発注者に係る入札参加資格では、事業者を区分するための格付け制度が設けられています。格付けによって入札参加可能な工事の規模(予定価格)が異なります。
この格付けの基となる点数は、経営事項審査の評価点数と過去工事成績評定を基にした点数を、それぞれ必要な調整をしたうえで合計して算出されます。
一定期間内に完成した工事の工事成績評定点を基に、技術力や施工管理能力を確認し、等級区分に反映させる運用が行われています。
指名競争入札での指名基準
指名競争入札では、発注者があらかじめ定めた基準に基づき、入札に参加させる事業者を選定します。
この事業者指名の基準(指名基準)に、事業者の施工実績や技術力に関する要件が含まれている場合があります。
したがって、工事成績評定の点数が低い場合には、指名の対象になる回数が少なくなる可能性があります。
総合評価落札方式
総合評価落札方式では、価格だけでなく、技術提案や施工能力等を総合的に評価して落札者を決定します。
総合評価落札方式の工事入札で、事業者の施工能力を客観的に確認する資料として、過去の工事成績評定の結果が活用される場合があります。
具体的には、工事成績評定点の平均値や優良工事表彰の有無が評価項目として設定される例があります。
工事成績評定を高める方法
評価項目でミスしないための取組み(現場マネジメント)
工事成績評定において点数を落とさないためには、評価項目そのものを意識する以前に、現場全体を安定的に運営する体制を整えることが重要です。
多くの減点は、施工上の重大な不具合ではなく、工程の遅れ、記録の不足、対応の遅延といった日常的な管理の乱れから生じています。
そのため、現場では、工事の進捗状況や課題を早期に把握し、必要な対応を前倒しで行う運用が求められます。
工程に影響を与える要因が生じた場合には、速やかに整理し、発注者と共有したうえで対応方針を明確にしておくことが、評価上のリスクを抑えることにつながります。
また、現場内での情報共有が不十分な場合、対応の遅れや認識のずれが発生しやすくなります。
現場代理人や主任技術者だけに判断を集中させるのではなく、現場全体で状況を共有できる体制を整えておくことが、結果として評価項目でのミスを防ぐことにつながります。
事務手続きの運用体制、マニュアル化
工事成績評定では、施工内容そのものだけでなく、事務手続きや記録の整合性も評価に影響します。
提出書類や写真、打合せ記録が適切に整理されていない場合、実際の施工状況が十分に反映されないことがあります。
このような事態を防ぐためには、工事ごとに対応するのではなく、事務手続きの運用方法をあらかじめ定型化しておくことが有効です。
書類の作成手順や提出時期、写真整理の方法などをマニュアルとして整理し、工事の規模や担当者が変わっても同じ水準で対応できる体制を整えておく必要があります。
こうした運用体制が整っていることで、担当者間のばらつきを抑えつつ、企業として安定した評価を継続的に得ることにつながります。
新技術等の計画的導入
工事成績評定では、新技術や施工上の工夫が評価の対象となる場合があります。
しかしながら、こうした新技術を評定を目的に「思いつき的」に導入することは、必ずしも望ましいとは言えません。
新技術等を評価につなげるためには、工事の計画段階から導入の可否を検討し、施工計画の中に位置付けておくことが重要です。工事内容や現場条件との適合性を事前に確認し、導入目的や期待される効果を整理したうえで進める必要があります。
計画的に導入された技術や工夫は、施工の合理性や安全性の向上につながり、評価の対象として整理しやすくなります。
まとめ
工事成績評定は、請負工事の施工状況や品質を点数として整理する制度です。
工事成績評定の点数は、施工の品質はもちろん、現場マネジメントや事務手続きの運用体制、新技術等の計画的な導入といった日常的な取組みによっても左右されます。
そのため、工事成績評定を安定させるためには、個々の工事対応に加え、事業者としての運用体制を整理しておくことが重要です。
また、工事成績評定は、工事入札の透明性を確保したり、事業者の技術力向上に活かされるのみならず、入札参加資格の格付け、指名競争入札での指名、総合評価落札方式などでも参照されています。
そのため、入札への参加を検討する際には、参加する入札の発注者が、工事成績評定をどのように活用しているのかを、過去の発注情報から把握しておく必要があります。
工事成績評定の使われ方は発注者や入札方式によって異なるため、過去の発注実績や評価の傾向を踏まえて情報を整理することが、入札戦略を考える上で重要です。
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